よく「ドリルを買いに来た人が欲しいのは、ドリルじゃなくて“穴”なんだよ」っていうたとえ話があるじゃないですか。あれ、最初に聞いたときは「なるほどなあ」って軽く感心したんですけど、もうちょっと深掘りしたくなった。ものすごく単純に言えば「人は本当に欲しい結果(穴)を得るために手段(ドリル)を買っている」ってこと。だから「ドリルを改善する」って方向だけに注力しても、ユーザーが本当に求めている「穴がある状態」が手に入らなかったら意味なくね? みたいな。これ、プロダクトを作ったり、サービスを提供したりしているときによくぶち当たる課題だなと思う。最近は、ダイレクトスカウトの効果改善するプロダクトを作ってるから、それに例えて考えてみる。たとえば、採用活動で「ダイレクトスカウトの返信率をあげたいんです!」って要望があったとして、提供側は「返信率アップツール」をゴリゴリ作り込んで頑張る。でも実はその担当者が本当に欲しいのは「優秀な人材と面談できる状態」だったりする。スカウトの開封率や返信率は、そのゴールに行くための中間指標でしかない。ここでふと思う。「ならもう最初から面談設定して連れてきたらいいじゃん?」とか「人材が集まる仕組みごと提供すればいいじゃん?」とか考えるかもしれない。まさに「穴」が欲しいなら、穴を手に入れる仕組みを直接提供するほうが早くない?って話。でも現実には「すぐ会える魔法の仕組み」なんてなかなか存在しない。優秀な人材はバラバラに存在してて、アプローチ方法も人それぞれ。だからこそ、返信率アップみたいな地味な改善(ドリルをより良くする行為)が必要になる。この「じゃあ直接穴を提供しちゃえば?」というツッコミは結構本質的で、僕らが機能改善に没頭するとき、つい見失いがちな点を突いてくる。もし直接「穴」を提供できるなら、それが一番いい。だってユーザーが欲しいのは最終的なアウトカムで、ドリルはあくまでそれを得るための手段だから。でも、難しいのは、世の中の多くの課題がそんなスッパリ直接解決できるわけじゃないってことだと思う。商習慣もあるし、とかね。じゃあどう考えるか「ドリル」=プロセス改善の価値をちゃんとユーザーの「穴」に紐づけることが重要なんだと思う。「このドリルは、その先に確実に“穴”を開けることに近づけてくれますよ」っていうストーリーが見えれば、ユーザーはドリル改善にも納得する。逆に、ただ「このドリルは刃がめっちゃ鋭いんで、すごいですよ!」ってアピールしても、「それで穴開くんだっけ?」ってなってしまう。「ドリルと穴」の話は、要するにユーザーが本当に欲しい価値って何?を常に考えろってことだと思う。「穴=望む状態」への道筋をしっかり描いたうえで、ドリル(機能改善)がそのルート上で有益だと示せば意味がある。もし示せなかったら、それはただの自己満足で終わってしまう。俺が作る最強のツールってやつ。もちろん理想を言えば、テクノロジーが進化して「すぐ穴が出るサービス」を提供できるかもしれない。人材採用で言えば、「このボタンを押せばあなたが欲しい人材がピンポイントで面談に応じてくれます」みたいな魔法。でも、現実はそんな簡単じゃないから、とりあえずドリルを使いつつ、ドリルの進化も目指していくわけだと思う。個人的には、この「穴を求める人」と「それをドリルで支えようとする人」の関係性が面白いなと思う。あくまで人が欲しいのは穴なのに、気づけばドリルばかり磨いていることがある。そんなときは「本当は何が欲しかったんだっけ?」って立ち戻る。そこに戻れるかどうかで、プロダクトやサービスの進むべき方向がだいぶ変わってくる。世の中単純じゃないし、ドリルがないと穴開けられないことも多い。でも最終的には、その穴を一緒に喜べるかどうか、それがポイントなんだろうと思った。