こんにちは、Arashiです。昨日、同僚と雑談をしていた、ツー・サイド・プラットフォームの差別化についてまとめようと思います。いったん用語の整理「差別化」とは、同じカテゴリーに分類される他社製品と比較し、大きな違いを作り出すことを指します。ツーサイドプラットフォーム(Two-sided platform)とは、ふたつの異なる利用者グループが存在するプラットフォームのことを指します。具体的には、アプリマーケットにおける「アプリ開発者(供給側)」と「アプリ利用者(需要側)」、オンラインマッチングサービスにおける「ホスト」と「ゲスト」といった形で、異なる二者が相互にメリットを得られる仕組みを構築し、両者のやり取りを仲介するのが特徴です。このようなプラットフォームは、片側の利用者が増えることで、もう片側の利用者にもメリットが生まれ(ネットワーク効果)、事業が加速度的に成長していきやすい反面、片方の利用者にとって魅力が薄いと、もう片方にも影響を与えかねないという繊細なバランスを要する点が難しさでもあります。「誰にとっての差別化なのか」を明確にする必要がある既存サービスAがすでに市場にある中で、新たにツーサイドプラットフォームを立ち上げる場合、「どのように差別化を図るのか」が成否を大きく左右します。しかし、「差別化したい」と言っても、誰の視点から見た差別化なのかによって施策や方向性は大きく異なります。ツーサイドプラットフォームでは、通常、• メーカー(供給側)• パートナー(需要側/もしくは流通・販売など中間を担う側)の2つの利用者グループが存在し、それぞれが求める価値や課題は異なることが多いです。よって、どちらを主なターゲットとして差別化を図るのかを明確にしなければ、「結果的に誰にとっても魅力が弱い」状態になりかねません。メーカーにとっての差別化メーカーをメインターゲットとして、既存のプラットフォームAとの差別化を図りたい場合は、メーカーが欲しているパートナー(販路・協力企業など)の種類や特徴をどう変えるかが重要です。例えばパートナー企業の種類・質を変える既存Aではカバーされていない販路や新しい協力形態を提供することで、メーカーが「ここでしか得られないマーケット/支援」を獲得できるようにする。コスト・手数料体系の魅力化既存Aよりもメーカー側のコストや手数料を抑える、または付加価値の高いサービスを追加することで、「乗り換える理由」を明確にする。専門性の高いパートナーとの優先的な連携特定分野に特化したパートナーとの強いつながりを提供することで、メーカーにとって“質の高い販路”を手に入れる魅力を作る。パートナーにとっての差別化一方、「パートナー」を主なターゲットとして差別化したい場合は、パートナーが求めるメーカーのラインナップや条件が、既存のサービスAに対してどう足りていないのかを探ることが重要になります。新規メーカーとの接点を増やすまだ市場にはあまり知られていないが、魅力的なメーカー・ブランドを発掘・連携しておくことで、「ここでしか扱えない商材」を求めるパートナーを惹きつける。取引条件・サポート体制パートナーの負担が少なく、高い利益を得られる仕組みやサポートがあると、既存Aでは得られないメリットを感じやすい。特定のジャンル特化一般的なプラットフォームに比べて、特定カテゴリーに強いメーカーを数多く取り揃えることで、「専門性重視のパートナー」に訴求する差別化要因となる。市場全体から見た差別化さらに、メーカー・パートナー双方に向けて差別化を行う場合、市場から見て魅力がある差別化なのかという視点も重要です。真似に終始しないか既存サービスAと同じ仕組みやラインナップの模倣だけでは、市場に新たな価値を与えられません。ずらしすぎるリスク「メーカー・パートナーともに差別化しよう」としすぎると、市場が極端に小さくなり、その結果ビジネス規模が伸びない可能性もあります。市場全体のニーズやトレンドを把握しながら、適度に既存市場をカバーしつつも独自性を明確にするというバランス感が求められます。差別化を考える際のポイント誰を優先ターゲットにするかメーカーを中心に魅力をアピールするのか、パートナーを中心に魅力をアピールするのか。もしくは両方を狙うのか、戦略上の優先度を決める。既存サービスに対する不満・不足を把握するメーカーにとって既存Aはどんな課題があるのか。パートナーにとって既存Aはどこが物足りないのか。その課題を解決できる“差”こそが大きな強みになる。マーケット全体との兼ね合い独自化を進めすぎてニッチになりすぎないか。既存サービスとの重複領域と差別化領域のバランスをどう取るか。 差別化要素は「ユーザーにとって本質的か」を常に検証するここまで、メーカー側・パートナー側・市場全体の視点で「メーカーやパートナーの種類や領域」という観点から差別化を考えてきました。しかし差別化はこれだけではありません。例えば、機能的な差別化やユーザー体験(UX)の向上も大きなポイントです。豊富な分析レポート機能を提供する操作性の高いUI/シームレスな決済システムAIを活用したマッチング精度の向上といった施策は、プラットフォームの使い勝手や付加価値を高める上で有効となるでしょう。ただし重要なのは、それらの機能が「実際にメーカーやパートナーにとって、本質的なメリットをもたらすのかを常に検証することです。表面上の“機能差別化”だけでは、ユーザーが本当に求めている価値と噛み合わなければ、差別化にはつながりません。まとめツーサイドプラットフォームの差別化を検討する際は、まず「誰にとっての差別化なのか」を明確にすることが極めて重要です。メーカーが「ここでしか得られない販路」を求めるのか、パートナーが「ここでしか扱えない商材」を求めるのか。また両者の視点から市場全体へどのような価値を提示するのか、慎重に設計しなければなりません。さらに、機能やUX面での差別化を検討するときも、ユーザーが本当に求める本質的な価値に直結しているのかを問い続けることが、既存サービスを超える魅力あるプラットフォームをつくる鍵となります。